今では、思いつくほとんどの企業、ブランド、さらには個人までもが「.com」のアドレスを持っています。けれどこの拡張子にも「最初」があり、その最初は検索エンジンでもショッピングサイトでもありません。世界初の.comドメイン名symbolics.comは1985年3月15日に登録され、持ち主は、今ではほとんど誰も名前を覚えていないコンピューター企業でした。
ドメイン名の前のインターネットは?
ドメイン名システム(DNS)が登場する前、ネットワーク上のコンピューターは、全員が持つ共通のリストファイルで互いを見つけていました。ネットワークが大きくなってこの方法が難しくなると、今日使われている階層的なシステムが設計され、.com、.org、.eduなどの拡張子が生まれました。
Wikipediaによれば、.com拡張子は1985年1月1日に稼働しました。名前は「commercial」、つまり商業的という言葉に由来します。拡張子は用意されていましたが、誰も急いでいませんでした。最初の登録までは、2か月半待つ必要がありました。
Symbolicsとは?
Symbolicsは、マサチューセッツ州ケンブリッジで設立され、MITの人工知能研究所から生まれた企業でした。プログラミング言語Lispのために特別に設計された「Lispマシン」を作っていました。つまり、1980年代のAI研究者が愛用したワークステーションを作る会社です。
そんな企業が最初の.comを取ったのは、実は驚くことではありません。当時のインターネットは、大学、研究所、そしてそれらと働く技術企業からなる、小さな世界でした。Symbolicsはまさにその世界の中にいました。ドメイン名を取ることは、当時はマーケティングの一手ではなく、ネットワーク上で正しくアドレス指定されるために踏む技術的なステップでした。
1985年の.com全リスト
今も登録されている最も古いドメイン名のリストを見ると、1985年がどれほど静かだったかがはっきりします。その年に登録され、今日まで残っている.comは、わずか6つです。
- symbolics.com(1985年3月15日)
- bbn.com(1985年4月24日)
- think.com(1985年5月24日)
- mcc.com(1985年7月11日)
- dec.com(1985年9月30日)
- northrop.com(1985年11月7日)
ここで小さいけれど大事な注記があります。このリストは、今も登録されている最も古いドメイン名を示しているということです。1985年に登録されて、のちに手放された別のアドレスもあったかもしれません。だから「その年に合計6つの.comが取られた」と言うより、「今日まで残っているのが6つある」と言うほうが正確です。リストにあるBBNは、最初の電子メールが送られた会社としても歴史に名を残しています。
当時と今
Symbolics自体は時とともに小さくなりましたが、ドメイン名は生き続けました。symbolics.comは2009年に、XF.com Investmentsというドメイン投資会社に買われました。売却価格は公表されていないため、ネットに出回っている数字は慎重に受け止める必要があります。
| 1985年 | 2026年 |
|---|---|
| 最初の.com: 3月15日、1社だけ | 1億6,660万件の.com登録(2026年6月) |
| 今日まで残る1985年の登録: 6件 | すべての拡張子で4億160万件のドメイン名 |
| 登録は無料 | 年額の有料、仲介会社経由 |
| ユーザー: 研究者、エンジニア | ユーザー: ほぼ全員 |
VerisignのDomain Name Industry Briefレポートによれば、2026年6月30日時点で、.com拡張子のドメイン名の数は1億6,660万に達しました。すべての拡張子を合わせると、登録は合計4億160万件です。つまり、41年前にLispマシンのメーカー1社から始まったリストは、いまや世界で最も混み合うアドレス帳の1つになったのです。
この物語でいちばん好きな点はここです。インターネットで最も価値のある不動産の1つとされる.com拡張子の最初の持ち主は、それを投資としてではなく、ただ自分の仕事をやりやすくするために取りました。その日、1語のアドレスが何百万ドルで売買されるようになると予想した人は、誰もいなかったのです。
もしあなたが1985年にいたら、どの.comアドレスをまっさきに押さえますか?